プロローグ

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 この世界が狂い始めたのは1950年からだ。悪鬼と呼ばれる化け物が突如出現し、世界中がパニックに陥った。それはこの国――日本も例外ではない。  今は2023年。既にこの国の形態は崩壊し、犯罪は増え、人は飢えに苦しみ。まあ、そんなことは俺にはどうでもいい。  問題はこの狂った世界の原因が俺だと言うことだ。  ――幻想世界、トリストヴァレイはこの世界と隣接した小さな世界だった。しかし、とある男の研究により二つの世界は融合させられた。俺は幻想世界の方にいて、かつての仲間達と抵抗しようとしたけれど――無駄だった。  そう、無駄だったんだ。世界は融合を果たし、狂ってしまった。そして何より俺だけが幻想世界の存在を覚えていて、俺だけがここに立っている。  俺だけが――。 「君を責めているわけじゃないんだ、ごめん。……生き残ってくれてありがとう」  生き残ってくれてありがとう。何故彼女が消えてお前が生き残っているんだ。なんで彼女が消えなくちゃならなかった。何故彼が死ななくちゃならなかった。何故、何故俺が生きなくてはいけなかったんだ――?  答える人間はいない。いるわけはない。
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