召喚計画

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 しかし、浅間さんは何も言わず彼女を見据えている。女性は相変わらず唸っているし、上野くんはいつものように穏やかな笑みを見せていた。 「浅間さん、彼女に説明しなくていいんですか!? いつまでこうしてるんですか!? 乗り気だったの最初だけですか!?」  そう小声で浅間さんに向かい声を荒げたのは秋山さんだ。浅間さんは心底面倒そうに「おもしれーからこのままでいいじゃねえか」といつものように笑みを見せる。 「面白いって……上野も何か――」  秋山さんの声が上野くんに向いた時だった。その少しでかかった声を「あーーーもうっ!! わけわかんねェぞチクショウ! 頬つねっても覚めねえし! やっぱりオレ船に乗ろうとしてたぞ!? オレのクルーと船はどこだ!?」という怒鳴り声が遮る。 「ですから、僕が貴方を呼んだんです。ここは貴方がいた世界とは違う世界なんです」  上野くんのつとめて冷静な言葉に、彼女はその白銀の瞳を彼に向ける。 「あぁ? どういうことだよ? 呼んだ? 別の世界? 何一つわかんねえぞ」  どうやら彼女の世界には根本的に【別の世界】という概念がないらしい。私達には世界が幾重にも重なり合っている、というのは常識なのだけれど。
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