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「いや悪い、あんなに綺麗に吹っ飛ぶとは思わなくて……なんかそれっぽいオーラを出してたから強えのかと思ったら案外普通の人間なんだな」
浅間さんは右頬を押さえながらむっとしたように女性を見つめ、「俺はただの研究員だ。こいつらも元々は戦闘職じゃねえ、数年前までは孤児院出身のガキ共だ。唯一ここで戦闘職と言えるのはさっきお前と同じように呼ばれたそこの姉ちゃんとそこの戦闘指揮やってる垣内くらいさ」と言葉を吐く。カルティエさんはそれを聞いて「頭数に入れるの早いわね」と浅間さんを睨みつけた。
「そうするしかねえんだろ? 早いとこ帰りてえんだ、さっさとその悪鬼ってのぶっ潰しに行こうぜ!」
気が早い、というか妙ちゃんと別の意味でグイグイくる人だなあと思っていると浅間さんは頭を押さえて「お前の名前は」と問いかける。女性は「ゴスティード=ニメッタだ」と答えた。ようやく上野くんが「あっ、やっと話まとまりましたか!」と今までいじっていたらしいレーダーから顔を上げる。
「ちまちま考えんのは面倒くせえんだよ。……そういやそこのでっけえ吹っ飛ばされた奴は大丈夫なのかよ?」
ゴスティードさんが少しだけ心配そうに視線を向けたが、上野くんは「秋山さんなら大丈夫だと思いますが。ちょっと気絶にしては長いですね」とにこにこ笑っている。
「いやいや! 笑ってる場合じゃないから! 秋山さん!? 大丈夫!?」
空音さんがそう言いながら駆け寄るとぴくっと秋山さんが反応する。ただしその右頬の腫れが尋常ではない。浅間さんと比べても酷い。どんだけ強い力で殴ったのか。
「いふぁいじゃないですか! 浅間さん!」
痛いどころか数分気絶してたけど大丈夫なのだろうか、と浅間さんに掴みかかる秋山さんを凝視する。それを軽々と振りほどき、彼は何時もの笑み――少し腫れているせいで歪みが増しているそれを彼に向ける。
「ゴスティードさんは海賊なんですね! 後でたくさん話聞かせてください!」
上野くんはマイペースにそんなことを言い、ゴスティードさんは若干引き気味に「お、おう」と頷いた。
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