召喚計画

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「大丈夫か稔君?」  垣内さんの声に秋山さんは「ええ大丈夫です……浅間さんは?」と目の前で髪を直している彼に瞳を向ける。殴られたにもかかわらず彼の心配をするのか。 「問題ない。次行くぞ、大蔵 空音」  浅間さんは仏頂面でそう言うと空音さんに装飾の少ないロングソードを手渡す。普通の剣のようにも見えるが、鬼狩の戦闘班に配られるデザインではないことから新たに打ったものだと思われる。ちなみに武器の開発は主に浅間さんが設計したものを秋山さんと上野くん、他の研究員が形にしている。 「へー、使いやすそうな剣ね」  空音さんはそれをしばらく眺めていたが、「よし!」と気合を入れるように足を踏み出した。  媒介である長剣を魔法陣の上に置き、それに向かい手をかざす。青白い優しい淡い光が部屋を包み込む。まるで癒しの光のようなそれは、少年の形を作り出す。  そう、そこにいたのは少年だった。焦げ茶色の髪に同色の瞳を持つ美少年。歳は上野くんと同じくらいかそれより下だろうか。ゆっくりと瞳を開け研究室を一瞥する。多分その一瞥で全員を把握したのだと思う。静かに息を吐き、まずは目の前の空音さんに視線を合わせた。
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