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「――説明してくれるよね?」
息を吐くように出て来た言葉は思ったよりも冷静な言葉だった。動揺を悟られないようにしている可能性もなくはないが、それでもかなり落ち着いていてる印象がある。
「え、ええ……私達は――」
それまでカルティエさんやゴスティードさんに話していたことと同じような言葉を空音さんは並び立てる。ここがどんな組織か。何故貴方が呼ばれたか。この計画の理由。悪鬼という倒すべき化け物のこと。並びられたそれらを彼は冷静に受け入れた。
「これでも理不尽には慣れているんでね。今まで置かれていた状況を考えればこっちの方が幾分か良心的かも――いや、わからないな。こっちの世界では死んだらそれで終わりなんでしょ?」
不意に尋ねられ、空音さんは「当たり前じゃない、ゲームじゃあるまいし」と返す。すると少年は小さく笑って「そうだね」と返した。
「帰る時はちゃんと俺がこっちに来た時間通りに返してくれるんだよね?」
それを聞いた秋山さんが「はい、問題ありません。時間も場所も同じ時同じ場所に返すことができます」と返す。彼は秋山さんの腫れた頬を見て怪訝そうな顔をしたが、すぐに「ならいいよ」と空音さんに向き直る。
「やけに冷静なんだね」
「暴れてどうにかなるなら暴れるけどね。帰る術がなくなるのが一番嫌だし」
空音さんの問いかけに、彼はそう自嘲気味に笑う。
「じゃあ、貴方の名前を教えて。契約もそうだけどパートナーってことみたいだし」
そう言って手を伸ばした空音さんに、彼は小さく息を吸ってから「都賀井 善人(つがい よしひと)」と答えた。
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