召喚計画

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 目の前で赤い光が集まり人の形が構成されていく。私はその光景に安堵した。――しかし、それは人などではなかった。人ではなく、かつ自分たちがよく見慣れたもの。――そう、悪鬼だ。  漆黒のヒトガタに白い丸い瞳。次の瞬間私を引き裂くであろう棘のような両腕の先端部位につけられた爪。その瞳が細められ、腕を振り上げる。ああ、ダメだと目を閉じた。今は誰も武器を持っていない。助かる術なんてあるわけない。  響いたのは銃声だった。それは正確に悪鬼の眉間を貫き、銃口を悪鬼に向けた主――カルティエさんは「今よ!」と叫ぶ。 「秋山!」  その声とともに、私の体が宙に浮いた。多分浅間さんに腕を掴まれて投げ飛ばされたのだろう。  そんな私の目の前を白い光が煌めいた。頭を潰されながらも私を殺すことを諦めていない悪鬼の胴を一閃したのはゴスティードさんの左手に握られていたブレード。そしてその伸ばされた腕を切断したのは善人くんの持つロングソードだった。どうやら媒介に使われていた長剣らしい。  そんな一瞬を経て、私の体は見事に秋山さんに受け止められる。 「今のが悪鬼かよ、なんか手応えねえなあ」  そう言ってブレードを収めたゴスティードさんの背後で、善人くんが切断した黒い腕が蠢いた。彼はそれにいち早く気づき身構えた。切断された両腕それぞれから体が再生していく。 「浅間さん! 早くとどめを!」  秋山さんの声に突き動かされるように浅間さんは右手の手袋を外し、再生し切っていない悪鬼の胴を二体まとめて貫いた。悪鬼は黒いガラスの破片となり研究室の床へと散らばった。
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