召喚計画

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「団長、大丈夫!?」  駆け寄って来た空音さんに小さく頷いて答える。生きていることに驚いた。それ以上に召喚された三人が私を助けてくれたことに。 「私達も召喚した人間を殺そうとしたらああなってたってわけね」  カルティエさんはそう言って浅間さんの右手を見据える。彼は無言でいつもの手袋をはめた右手を振る。その白衣の袖は右肘までが砕けており、その破片すらも硬化して床に散らばっていた。 「今のが悪鬼って奴か? ショーカンもできんのかよ」  ゴスティードさんの悪態混じりのその言葉に、秋山さんは「いや、今のは――」と何か言おうとして、小さく首を横に振る。 「まあ出来ねえもんは仕方ねえさ。団長には後で個別に召喚の機会を設けることにする。だが、既に近々班員八人を想定していた作戦がある。さてどうしたもんか」  えっ、と軽く流された召喚に失敗した私が16班いられる事実に小さく反応すると、浅間さんは座り込んでいる私を見下すように見据えた。 「召喚の適性を持つ人間は今のところお前らしかいねぇんだ。それに、一回の試行で全員が成功するとは思ってねえよ。今回三人召喚できただけでも充分な収穫だ。……それとも何か? こいつらじゃ足りねえってか?」  浅間さんの問いかけに首をぶんぶんと横に振ると「あまり早坂をからかわないで下さい!」と秋山さんが怒鳴る。浅間さんは左耳を左手で塞ぎながら「うるっせぇなぁ」と彼を睨みつけたようだった。  からかわれたのだろうか? それとも浅間さんなりの激励だったのだろうか。それより私が気になったのはなんで悪鬼が召喚されたか、だ。私が作り出した召喚ゲートは一体どこへ繋がったのだろう。 「秋山。お前元々戦闘班志望だったよな? 16班に入れ」 「は……」  上を見上げると秋山さんは口を開けたまま固まっている。浅間さんの声はもう決定事項を話しているかのように命令口調で、そもそも彼が戦闘班志望だったことすら私は初耳だ。――私が殺した彼は知っていたのだろうか。
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