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「そう……わかった。ありがとう、吉川君。詳しいことは検査してみないことにはわからないけれど――戦うことは難しいかもしれないね。魔力は精神状態にも影響するし……やっぱり無責任なこと言っちゃったかな」
団長をベッドに寝かせた杉本医療班長はカーテンを閉めると沈痛な面持ちで事を報告した俺に向かい直った。
「だから言ったんです。あの状態では無理だって」
医務室の奥から聞こえてきた女性の声に視線を向ける。長いパーマがかかった黒髪に、蒼い瞳の女性がこちらを睨むように見つめていた。
「美咲ちゃん……」
杉本さんが彼女の名前を小さく呼ぶ。諌めているようだったが声に覇気がない。
「失言でした。わかっています。わかってはいるんです。彼女も鬼狩だと」
彼女は俯いて「わかってはいる」と繰り返す。杉本さんはその言葉を聴いて小さく頷いた後、「とりあえず検査をするから――結果は団長ちゃん本人に伝えるね」と笑みを浮かべる。
医務室から出た後、カルティエさんが俺に向かい「あの子、何かあったの? 私が召喚された時から思い詰めた様子だったみたいだけど」と問いかける。それは俺も気になっていた。原因は浅霧さんのこと、だろうか。それとも他に何か――。
「……後で話すよ。昨日の今日で俺も少し戸惑ってるから」
そう言うと、彼女は「わかった」と頷いて「……厄介なことに巻き込まれたかな」と呟いた。
「ごめん」
俺が頭を下げると、彼女は視線をそらして口を開く。
「別にアンタには言ってないよ、帰るのに協力してくれるんでしょう?」
それはもちろん、と返すと「厄介なのはこの組織。悪い意味で戦闘組織っぽくないのよ」とカルティエさんは言う。確かにそうかもしれない。
「設立当時は本当に人類の希望みてえなもんだったんだけどな」
脳裏に浮かぶのは俺がまだ幼い時の情景。灰が降る中、巨大な悪鬼二体を相手に一槍の白銀の槍を振るい、片腕を吹き飛ばされても動じることなく鬼神の如く駆け抜ける白い影。
「今は違うの?」というカルティエさんの問いに、「今は俺が――俺たちが希望になれるように頑張ってるよ」と返す。
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