プロローグ

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◆ 「団長!……相模隊長も」  鬼狩の本拠地である地下シェルター内の作戦室に入ると彼女の周りに人が集まってくる。俺は自分の席についてそれを眺めた。  彼女に最初に駆け寄ったのは吉川 燕(よしかわ つばめ)。現鬼狩のエースの青年で、団長より幾つか上だったか。それでもまだ初々しく、鬼狩が正義であると信じている。まるであの娘のように。どうやらあまり深く物事を考えない馬鹿らしい。緑の髪に、頭にゴーグルをつけている。瞳は髪と同じ緑色だ。 「相模、お前ひでぇ顔してんぞ」  そう俺の肩を叩いたのは、茶髪に赤い瞳をした男。目には隈がはっきりと浮いている。笑い方が悪鬼そっくりだというのが鬼狩メンバーの共通認識だ。名を、浅間(あさま)という。下の名前は知らない。 「っと、上野ー! 手伝い頼むわー!」  浅間に呼ばれた少年は「はい!」と元気良く立ち上がる。彼は今年からの新人隊員の上野 和人(うえの かずと)だ。新人隊員といっても、今は戦闘ではなく武器開発や魔法研究などの浅間の手伝いをしている。黄色い髪に同色の瞳をした、まだ幼さの残る少年。 「武器のテストしたいんだが……吉川と団長はちょい厳しそうだし大蔵 空音! お前でいいや!」  浅間に指を差された女性は彼に詰め寄る。大蔵 空音(おおくら そらね)。白髪に近い銀髪に赤い瞳をした少女。彼女は吉川と同期で、まだ壊れていない方だ。悪鬼を倒すことで平和が来ると信じている子の一人――だと思われる。 「私を余りみたいにいわないでよ……準備したら訓練所いきます!」  彼女はそう言ってすたすたと寮の方へと歩いて行く。 「嫌いだよ、お前みたいなの」  何故かそんな言葉が浅間に向かって口をついて出る。浅間は「俺もお前が嫌いだよ。そういうもんだろ、特にこの世界では。嫌い同士仲良くやろうぜ」と俺の肩を叩く。そういうところが嫌いなんだと、口の中で言葉を作った。
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