黄色いチューリップ

11/12
前へ
/14ページ
次へ
「はあっ、はっ……」  がむしゃらに走った私は、気がつけば、見知らぬ公園に来ていた。 「はあ……っ、あ!」  夢中で走って逃げてきから、無意識のうちに握りしめていたらしい。  あんなに私の心を弾ませた黄色いチューリップは、ぐしゃぐしゃになっていた。 「泣く……もん、か」  涙を堪えて顔を上げると、一面の黄色が私の顔を照らし出す。 目の前の花壇は黄色いチューリップで溢れていた。 『佳奈、愛してる』  そう言って、彼が手渡してくれた大好きだった黄色い花。  ……彼の庭には、一輪も咲いてはいなかった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加