524人が本棚に入れています
本棚に追加
あの男がすんなり倉田を返す事はないだろうと思ってた。
だけど、俺の思った通りの展開にイラっとする。
『俺も仕事が詰まってるから、もう少し残業して帰る。
気をつけて帰って来いよ』
そう返信して、俺は再び画面に視線を落とす。
周防に対して不安がない訳じゃない。
だけどイブの約束を守るためには、今日明日で根詰めて仕上げないと厳しい。
必死に集中して仕事をこなしてたら、気づいた時はもう午後9時を回っていた。
久々に仕事を家に持ち帰る事にして、パソコンの電源を落としデザイン室を出る。
もう彼女は家に帰っているだろうか?
ようやくエレベーターのドアが開くと、社長が乗っていた。
「おや?藤森くん今日は随分遅くまで残業だね」
「社長もお疲れ様です。納期の忙しい案件が詰まってまして…」
「そうか。年末まで大変だろうけど頼むよ」
微笑んで言ってくれた社長に一応聞いてみる。
「社長…A+LIVEの周防という男をご存じですか?」
「…ああ、知っているよ。若いけどなかなかのやり手だ」
「今回、新規オープンの店舗を依頼されて請けたんですが…
社長の紹介か何かですか?」
その質問に社長はじっと俺を見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!