第一話

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今でも綿毛を見つければ思わず息を吹きかけてしまう僕としては、その楽しみを禁止されてしまったようでなんだか少し寂しいものがある。 「たんぽぽは繁殖力も生命力も強いからねぇ。下手に綿毛なんて飛ばせば庭がたんぽぽだらけになっちまうさ。」 「いいじゃないですか。綺麗ですよ、たんぽぽ。」 「綺麗は綺麗でもね、根が長いから刈るのも一苦労さ。まぁ食べれるし悪いことだらけじゃないけどねぇ…。」 「え、食べられるんですかっ!?」 たんぽぽはどこにでも、それこそアスファルトの隙間で生きていたりもして僕にとっては身近な花だ。だけど食べられるなんて聞いたことがないし、食べようと思ったことだってない。 そもそもあの花のどこを食べるんだ…? 「そうだよ。花のところは天ぷらにしたりね。あとは…、根はコーヒーの代わりになるらしよ。」 「根っこ!?」 僕の疑問に答えるようにしてそんな言葉を口にしたタマさんに、また驚きの声を投げた。 人参や大根は根っこの部分を食べているのだからそんなに驚くことではないのかもしれないけれど、それでも人参とたんぽぽは違う。 そこらへんの名前もわからない雑草を「食べてみなよ。」と言って渡された気分だ。
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