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あれは特別仲のいい友人と家へ帰っている途中のことだったと思う。いつもただぼんやりと歩いているだけの通学路で、今まで知らなかったわき道を見つけたのは。
もともと好奇心が強い方の僕は、当然のことのように進行方向を変えた。
先へと進む友人に一言。
『ちょっとこっちに行ってみるから。』
そう声をかけた僕に、友人はなんて答えたんだっけ…。
「いくら暖かいとはいえ、そんなところで寝るのは関心しないねぇ。」
昔の記憶を旅している俺に、頭上から声が落ちてきた。
同時に近くで空気が動く。それを感じ取って目を開けば眉を下げ、困った顔のタマさんがいた。
日焼けを知らない白い肌に、浮き彫りになったように目立つ赤い口紅。
「あれ?寝てました?」
赤で縁どられた唇がゆっくりと開く。
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