第八章

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志「…………」 いつもならば、 晋作と反対側の隣には稔麿がいた。 けれど今はもう、そこは空席。 悲しげな瞳でその席を見つめている志乃。 ーーー食事前には必ず、稔麿が 自分が嫌いなものをあたしのお膳に乗せて来てた。 なのに…もうそういうことをする稔麿はいない。 ……あたしが、殺したんだもん…… 晋「…………」 そんな様子を見て何を思ったのか 晋作は箸を取り自分の膳にある野菜を 志乃の皿に移す。 玄「何してるんですか」 晋「いや、嫌いだから食ってもらおうと思って」 呆れた目で晋作を見る玄瑞。 玄「普通立場逆ですよ、逆」 九「手本になるのが普通だろう ガキか貴様は」 晋「稔麿だって同じことしてただろ!」 九「稔麿は貴様より年下だろう」 晋「関係ねーよ!」 ぎゃーぎゃーと言い争いが始まり、 その場は他の藩士たちの笑いに包まれた。 志「………ありがと、おにーちゃん」 志乃のその呟きは、 皆の笑いに包まれて消えていった。 桂「…見てるかい、稔麿… 君が妹のように思っている志乃は… ちゃんと笑っていられている だから、安心して見守ってなさい」 優しい表情で天井をあおぎ、 そう、稔麿に言うように呟く。 ーーーえぇ、任せましたよ、桂さんーーー…
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