第13話

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玄関の扉を激しく揺すってベルを鳴らさない限り 家に侵入したところで耳の遠い老婆は気づかない。 高鳴る胸を押さえつつ 僕はそっと階段を上る。 先日と同じように 息をひそめて 暗い廊下を突き当たりの部屋まで歩いた。 マリアの部屋に近づいてくるにつれ 心臓が早鐘のように打った。 そっとドアノブを回す――。 同時に。 汗ばむ片手は ポケットの中の折りたたみ式ナイフを握っていた。 証明して見せる。 僕が君のために どこまでできるか――。
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