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「さて、これから歩かないといけないわね」
邪魔な熊を退治したから、今度は森から脱出する方ね。こっちの方が大変そうね…
と、またしても後方に気配を感じた。まったく、何なのかしら今日は…
振り返ると。
「…何もないわね、気のせいかしら」
普通の森が広がっているだけだった。
「気のせいかしら?まぁ…」
仕方ないわね。何気なくしゃがんで足元の木の棒を拾い、
「何か居るわよね?」
もう一度、振り返って見当をつけた辺りへと投げつける。
「ひゅい!?」
「やっぱりね。出てきなさい」
予想通り、ソコに居る何かに棒は当たった。
不意をつかれた相手は、観念したように姿を現した。
「いや~、私の光学迷彩を見破るとはね~。お姉さん、強いね?」
「当たり前よ。というかアンタ…小さいわね」
私の目の前に歩いてきたソイツは、身長は私の肩くらいまでの少女だった。何故か背丈に合わないくらい大きなリュックを背負っているけど。
「小さくないやい!これでも河童の中では普通だよ!」
「河童…?あら、アンタは妖怪なのかしら?」
「もちろん!…って、もしかしてお姉さん…人間だったり、する?」
「当たり前よ。少し普通とは違うけれど」
なるほど、コイツは河童だったのね。光学迷彩とか言ってたのは、河童の持っている能力かしら?
「熊を吹き飛ばす風を起こせるのが『少し』…」
「何よ失礼ね。アンタ、名前は?」
「へ?名前?」
「そうよ。もしかして、河童には名前を付ける文化が無いのかしら?」
名前くらい聞いておかないと話すのに不便よね。
「あるよ!私は河城 にとり。よろしく!」
「よろしく。私は…やっぱ言うの止めようかしら?妖怪に名前を覚えられても良い事があるか分からないわ」
「ちょっと!河童と人間は盟友だよ!?」
「冗談よ、私を襲わない時点で良い妖怪って分かってるわよ」
私は軽く笑って、にとりの手を握る。
「私の名前は井鷹 颯綺。サツキって呼びなさい。よろしくね」
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