第1話

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「さて、これから歩かないといけないわね」 邪魔な熊を退治したから、今度は森から脱出する方ね。こっちの方が大変そうね… と、またしても後方に気配を感じた。まったく、何なのかしら今日は… 振り返ると。 「…何もないわね、気のせいかしら」 普通の森が広がっているだけだった。 「気のせいかしら?まぁ…」 仕方ないわね。何気なくしゃがんで足元の木の棒を拾い、 「何か居るわよね?」 もう一度、振り返って見当をつけた辺りへと投げつける。 「ひゅい!?」 「やっぱりね。出てきなさい」 予想通り、ソコに居る何かに棒は当たった。 不意をつかれた相手は、観念したように姿を現した。 「いや~、私の光学迷彩を見破るとはね~。お姉さん、強いね?」 「当たり前よ。というかアンタ…小さいわね」 私の目の前に歩いてきたソイツは、身長は私の肩くらいまでの少女だった。何故か背丈に合わないくらい大きなリュックを背負っているけど。 「小さくないやい!これでも河童の中では普通だよ!」 「河童…?あら、アンタは妖怪なのかしら?」 「もちろん!…って、もしかしてお姉さん…人間だったり、する?」 「当たり前よ。少し普通とは違うけれど」 なるほど、コイツは河童だったのね。光学迷彩とか言ってたのは、河童の持っている能力かしら? 「熊を吹き飛ばす風を起こせるのが『少し』…」 「何よ失礼ね。アンタ、名前は?」 「へ?名前?」 「そうよ。もしかして、河童には名前を付ける文化が無いのかしら?」 名前くらい聞いておかないと話すのに不便よね。 「あるよ!私は河城 にとり。よろしく!」 「よろしく。私は…やっぱ言うの止めようかしら?妖怪に名前を覚えられても良い事があるか分からないわ」 「ちょっと!河童と人間は盟友だよ!?」 「冗談よ、私を襲わない時点で良い妖怪って分かってるわよ」 私は軽く笑って、にとりの手を握る。 「私の名前は井鷹 颯綺。サツキって呼びなさい。よろしくね」
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加