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「藤森部長が直々にお見えになるとは予想外でしたよ」
正面のデスクに肘をつきながら微笑む周防は、ゆっくりと立ち上がって俺と倉田の向かいのソファーへと腰かけた。
「早速ですが、周防さん。
今回のお取引につきましては…白紙に戻して頂きたくお願いに上がりました」
「そういう事だろうとは思っていましたがね…」
そう答えて俺をじっと見据える周防。
その瞳にはまるで感情なんて乗ってない。
あくまでも俺にしろ美穂にしろ、こいつにとっては『モノ』なのだろう。
俺はこの、人を『モノ』としか見ない人間を知っている。
「倉田は…我社にとってかけがえのない人材であり、周防さんもご存じのように、俺にとっても大切な女性です。
ビジネスとプライベートは別ですが、倉田本人もお断りしておりますし、申し訳ありませんが、これ以上のお取引は不可能だと判断させて頂きました」
言い切った俺をじっと見つめていた周防がゆっくりと口を開く。
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