第1話

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機嫌が悪くなった時に出来る眉間の皺さえ色気がある。 わたしの前では機嫌が悪くなることは無いけど、如月君や星夜君と一緒いる時はいつも皺が寄っている。 その表情は緊張感があって迂闊に近寄れない。暴走族の副総長の顔になってるの。それを遠巻きに見て萌えているわたし。 天は彼に二物も三物も与えている。ご先祖様の優性遺伝子が全て集結されて出来た子なんだ。 それに男の子には珍しく、いい匂いがする。 この前の別れ際に駅のホームで抱きしめられて、あまりにもいい匂いがしたので、膝がカクンと折れそうになった。いきなり抱きしめられて、緋英君の思いがジンと伝わって来た。 新幹線に乗り込んでから、ドア越しに緋英君と見つめ合いながら泣いちゃったんだっけ。 「う……うっうっ」 思い出しただけで、涙が出て来た。 緋英君に好きなケーキを聞かなきゃいけないのに、泣いてなんかいられない。 ソファに放り投げたスマホを這いつくばって手にした。 少し、嗚咽を吐きながら、緋英君に電話をかけた。
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