第1話

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今日のわたしは大忙しだ。緋英君がやってくる頃までに無事出来あがるのかしら? 不安になりながらもついでにケーキのことを母に聞いてみた。 「ねえ。お母さん。わたしが作ったケーキで一番美味しかったケーキってなにか覚えてない?色々作って上げたでしょ? スポンジ系とかムース系やチーズ系とか……食べた記憶あるでしょ?」 『沙耶香が作ったケーキで美味しかったもの?』 「うん」 『焦がしたクッキーなら覚えているけど。ほら、オーブン機能で焼かなきゃいけないのに、電子レンジ機能で20分も焼いちゃって、炭になってたヤツならね。あの時、レンジから煙が出て、火災報知機が鳴っちゃって、大騒ぎしたわよね』 どうして、母親と言うものはこんなにどうでもいいことを覚えている人種なんだろう。 一瞬殺意をおぼえてしまったのは、寝起きのせいにした。
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