第1話

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『まあ、一番おいしいと思ったのは……ドーナツかな』 「……」 ドーナツ…… 丸くくり抜いた生地を油で揚げたヤツね。 完全にOBだ。 ショックのあまり手にしていたレポートを床にばらまいてしまった。 『沙耶香? どうしたの?』 能天気な母の声。 わたしがどれほど打ちひしがれたか分かりもしないんだろう。 バースディケーキとして、ドーナツなど出したら…… 常識から外れた女だと、緋英君から見下され別れを切り出されそう。 「ありがとう。最善を尽くしてみる」 それだけ言って電話を切りスマホをソファの上に投げて、そのまま倒れ込んだ。
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