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『まあ、一番おいしいと思ったのは……ドーナツかな』
「……」
ドーナツ……
丸くくり抜いた生地を油で揚げたヤツね。
完全にOBだ。
ショックのあまり手にしていたレポートを床にばらまいてしまった。
『沙耶香? どうしたの?』
能天気な母の声。
わたしがどれほど打ちひしがれたか分かりもしないんだろう。
バースディケーキとして、ドーナツなど出したら……
常識から外れた女だと、緋英君から見下され別れを切り出されそう。
「ありがとう。最善を尽くしてみる」
それだけ言って電話を切りスマホをソファの上に投げて、そのまま倒れ込んだ。
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