第1話

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8月29日の午後10時。 一人暮らしには広すぎるほどのリビング内。 過去一年間分の大量のレシピとにらめっこをしていた。 パティシエ見習い?としてのプライドと腕への自信のなさで押し潰されそうになっていた。 どうしよう…… 教材以外にも独自で作成したレポートを順に捲り出す。 教授から評価が良かったものには星を三つ。 同期生から評価が良かったものにはハートを三つ。 レポートに記された星マークとハートマーク。 フルポイントをゲット出来ていたのが…… ブッシュ・ド・ノエルってなんのバチ? 明日は、8月30日で、彼氏でもある松木平緋英君の誕生日だ。 とっておきのバースディケーキを作ろうとしていたのに…… 真夏にクリスマスケーキなんか、出せるはずない! 幾ら、フルポイントをゲットしていた自慢のケーキでも、緋英君、お腹抱えて笑いそう。 ダメだ、ダメだ、ダメだ。 取りあえず、そのレポートは抜き取って、テーブルの端に置く。
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