全てを越えて

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その週末には美穂のデザインもほぼ完成形になっていた。 「隼人さん、ちょっと見てもらっていい?」 専務室に戻ると美穂に声をかけられて、俺は美穂のパソコン画面を覗き込む。 そこには今までの冷酷企業のFUJIホールディングスのイメージを覆すような、温かみのあるデザイン。 このイメージ… そうだ… 美穂の実家に向かう緩やかな坂から見える大海原。 たくさんの花に囲まれた美穂の家の庭…。 たくさんもらった両親からの愛情。 その全てが集結された優しいイメージのデザインが出来上がっていた。 「…さすが美穂だな… 俺にはこんなデザイン描けねーよ…」 ポツリとこぼした俺に、美穂は優しく微笑んだ。 「お父さんも…見てくれるかな…」 「…ああ、必ず見てくれるよ」 きっと…美穂の親父さんも思いを分かってくれる。 そう願いながら俺は彼女を抱き寄せた。
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