イッグの木

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 気がつくと、二人は泉のほとりに立っていました。あの古い小屋も消えてなくなっていました。  二人は泉を離れ、花を摘んだり、追いかけっこをしたり、おしゃべりしたりしました。  どのくらいたったでしょう。二人がイッグの木の根元に座っていると 「やっと見つけた」  木の上から声がしました。  二人が上を向くと、一匹の栗鼠が幹を駆け降りてくるのが見えました。 「ぶつかる」と思った瞬間、栗鼠はジャンプして二人の前に立ちました。 「おいら二人をずっと探してたんだよ。どこに行ってたんだい?」栗鼠が言いました。 「あなたはだぁれ?」女の子はたずねました。 「おいらはラタトスク。イッグに住んでるリスさ。君らみたいな子を案内するのが、おいらの秘密の仕事さ」  栗鼠はその小さな胸を、思いっきりそらせて一気に言いました。 「わたしたちのほかにも、誰かいるの?」続けて女の子は聞きました。 「ああ、そこにもいるし、あそこにも」  栗鼠が指差しましたが、二人には見えませんでした。 「どのみち何を見たって聞いたって、全部忘れちまうんだから同じことさ」  どうでもいいようなことを聞くんだな。といった感じで栗鼠は言いました。  と、その時。
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