イッグの木

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 そこは、どこかの  どこにでもある、一軒の家  カチャカチャカチャ  お皿を洗う女性がいます  「あっ…」  小さな声、お皿を洗う手が止まります  「どうしたの?」  後ろから近づく男性  旦那さんでしょうか  女性は自分のおなかに両手を添え 「今ね、初めて動いたの」  男性は後ろからそっと手を重ね 「早く顔が見たいな。女の子かな男の子かな?」 「まだまだずっと先よ。気が早いんだから」 「僕は幸せだ。この子も幸せになってほしいね」  女性は手を握り返し 「あら、私たちの子供よ。きっと幸せになるわ」  そう言うと振り返り、キスをしました  窓の外、硝子越しに一匹の栗鼠が見ている  何かを確かめ終わったかのように  音もなく、栗鼠は去ってゆく
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