イッグの木

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 そばまで行くとそれは、二人の背丈の十倍、いやそれ以上ありそうでした。 「なんだろうね?」 「何かしらね?」 二人が話していると。 「だれ?」 頭の上から声が聞こえました。 二人は上を見ましたが、声の主はわかりませんでした。 「これよ。この大きなのがしゃべったのよ」 「じゃあ、これは生きもの?」 二人は、恐くなって後ずさりしました。 と、その時その大きなものは、ざざっ…ごごっと音を立て動きだしました。  二人は足がすくみ、ただ見上げるばかり。  それは、立ち上がると振り返り 「何のよう?」と言いました。  やっとのことで二人は、それが大きな女の人だということがわかりました。 「僕たち、川を渡れるところを探してたんです」男の子は、そう言うのが精いっぱいでした。 「この橋を渡りたいの?」 二人はうなずきました。 「それでは、あなたたちの名前を言いなさい」 「名前って何?」女の子は聞きました。 「あなたが誰かということを現すもの。わたしはモーズグズ。ギャッランブルの橋の番人。あなたたちは?」 「わたしたちの名前って知ってる?」女の子は小声で男の子に聞きました。 男の子は首を横に振り、そして言いました。 「名前は…ありません」
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