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三人で歩く。
整った石畳の硬い感触が足に伝わる。
「……君知、早速人気者だね」
くす、と英が笑う。
ずっと下を向いていたのでわからなかったが、女子生徒達がちらちらと君知を見て顔を赤らめている。
「はは。ここじゃあ性癖で引かれることもないだれうな」
「そこまで引くような性癖でもないのにね」
乾いた笑い。
「あーでも逆に俺が引くような性癖はいやだな」
確かにそうだ。
こんな学校に入学したからって"異常な性癖“が平気という訳ではないだろう。
自分だって正直怖い。
「まあ、同じ高校生だし、ね」
君知は鞄から文庫本の様なものを取り出した。
「……それ、聖書?」
「ああ」
君知は微笑む。
整った顔が美しい。
「君知、後でまた汗拭かせて……?」
やっぱりこいつは危ない。
「二人は知り合い?」
二人のやり取りは自然だ。初対面ではないだろう。
「ああ、中学からのね」
「それな」
本を読みながら歩くのには慣れているようで、君知はペースを崩さない。
「本当にね……君知の汗は素晴らしいんだ……!」
英は恍惚とした表紙で語る。
「止めろよ照れるだろ」
棒読みで君知が答える。
何が素晴らしいのかは死ぬ程興味がないので何も言わない事にする。
「あ、新入生?これ貰った?」
先輩らしき女子生徒が、クラスが書いてあるプリントを配っていた。
「まだです」
君知が僕の代わりに答えてくれた。
「じゃあはい!ここにクラス書いてあるからねー」
一人ずつ丁寧に渡してくれた。
「……あは。三人ともB組だよ」
「え、あ…本当だ」
安心した。
人見知りで喋れないから、少しでも話せる相手がいて良かった。
「裕也」
君知が口を開く。
「これでまた話せるな」
にこりと笑う。
「……うん」
この学校は病院と成り立っているらしい。
だから生徒は定期的にカウンセリングを受けているそうだ。たまに看護師なんかも見かけた。この学校の造りがなんとなく不思議に見えたのはそのせいだった。
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