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桔平が涼子に決別を突き付けられたことを、一早 く聞きつけたのではないだろうか。
元木の太陽のように目映い笑顔が、疎ましく胸に 浮かんだ。
冗談じゃあない。
慰めの言葉など、真っ平御免だ。
元木には、美しい恋人がいた。
それに比して、今の自分は何と惨めったらしい男 なのだろう。
根が気崇にできている桔平は、ひどく情けない思 いに駆られた。
と同時に、元木への理不尽な怒りが沸々と肚の底 から沸き上がってきた。
コンプレックスが怨念に転化する時の威力たるや 凄まじい。
今や桔平の体内は、元木への怨念で満ち満ちてい る。
眉間にはシワが深く刻まれ、陰険な光りを放つ目 は釣り上がり、悪鬼羅刹の形相だ。
桔平は震える親指で、携帯電話の受信ボタンを押 した。
元木への殺意を込めて……。
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