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すると鼓膜が破けそうな大きな音とともに、地鳴りがした。体が振動で揺れる。手足が震えるかのようにガタガタと。
立っていなくてよかった。ドアにも何かぶつかったらしく大きな音を立てる。
さっきまで鳴っていた楽器の音は、一切なくなった。
悲鳴が上がる。ほかの部品も置いていたのだ。科学室は吹っ飛んでいるだろう。何せ、ニトログリセリンが五百㏄なのだ。優気子が気になって慌てて立つ。
「先輩、危ないですよ」
後輩が伏せたまま俺に言う。
立つと後ろに体育館が見える。体育館も中がところどころ見える。体育館から科学室は遠いけど、窓ガラスが全部、割れていた。
「地震じゃないんだから、このくらい平気だ!」ドアは歪んで、優気子を捜しに行こうと外に出ようとすると、後輩に止められた。
「先輩、まだガラスの破片が散らばっていますし、飛ばされたドアがあるところもありますよ。この教室棟もいつ崩壊するかわからないですよ」
「だから今、行くんだ!」
俺は振り切って、消火栓の中の消火器を取り出してドアにぶつけてドアをこじ開けると元科学室に行った。エタノールや単体ナトリウムなども出火しているだろう。
いや、もうそこは科学室とは呼べないほど、跡形もなく消え去っていた。床も天井も、何もない。
焦げた臭いと大きな穴。火はまだ踊っていて、次はどこを燃やそうかと狙っているかのように見えた。
事態は悪化していく。
「このバカ優気子、なんてことをしてくれたんだ!」
俺は必死で優気子を捜した。
吹き飛ばされたのだろうか。
いや、それはないだろう。
もしぶっ飛んだのなら、ニトログリセリンだから全身、木っ端微塵になってもおかしくないはずだ。
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