第1話

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他の生徒に訊いても愛内優気子さんが原因らしいと言うんだ。それは本当かね?」  優しい抑えた口調をしているが、心の中では犯人は優気子だ! と指差してるに違いない。おれはもちろん優気子お庇う気満々だから、「いえ、事故です」と言い張った。  当たり前だ。誰も殺しはしてない。怪我はさせてしまったが。  優気子は優気子なりに反省していると思う。それをどうこう言ったって、優気子を傷つけるだけだ。 「愛内優気子は普段、学校をよくサボっていたそうだな」 「それが何か」  俺はムッとした顔をしてしまってから、しまった、と気付いた。相手の調子に乗っては優気子の明暗が決まる。具体的に言うと退学。 「学校に不満があったから、科学室というおいしい……いや、悪い言い方だね。科学室という学校を爆破できるようなものが置いてある部屋でダイナマイトを作ったんだな」刑事が言う。  誰もダイナマイトなんか作ってないですよ~だ。心の中で舌を出しながら言う。 「爆発を起こした原因は優気……愛内ですが、悪気があってしたわけではありません」  こちらをいらだたせるように意地の悪い言い方を刑事の人が言っているのだと思った。科捜研では、まだニトログリセリンだと判明してないのか。
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