第1話

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「悪いこと、してないもん」 「ニトログリセリン作ろうとした時点で罪だ!」 「巧がなんて言ったって、知らないもん」  ふくれっつらのままで実験を続けている。瓶を放そうとしない。  次の日。俺は保管庫の鍵を顧問に交渉に行った。 「先生、相談があるんですけど」  と俺は、先生に話を持ち出した。 「保管庫の鍵、もっと厳重にできませんかね?」 「それは、部長に言って予算会議で決定しないとな。でないと、鍵はつけられん」  優気子がいつものように社長出勤して来ると、科学室の保管庫に行って、嬉しそうに瓶に入ったニトログリセリンを五○○㏄持ってきた。  衝撃を与えると爆発するので、見ていて怖くなる。他の部員は知らないから平気だけど。  俺は危険を察知して 「みんな、今日の部活は、科学室から離れてしよう!」 「なんでですかー? 巧先輩」  俺は説明している暇がないので、とにかく部員に 「みんな! 離れたところに行って!」 「わかった!」  優気子の日頃の態度で、みな何かを悟っているようである。
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