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まさか、そこまでするとは思えないと顔に書いて、優気子に訊く。
「うん。ばっちり」
親指を立てて「グッ」とポーズをするのはいいが、本当に安全なのか? 考えれば考えるほど、不安になってくる。
「いつ作ったんだ?」
「夜中。混酸にグリセリンを反応させるのに、時間を食ったんだけど、合い間を見て。ニトログリセリンを作るより、簡単だから」
優気子は頭いいからな。ああ見えて。ついでに、ピアノも全国コンクールで優勝するくらいだから、やっぱりすごいのだと思う。
でも、優気子から見れば、その全国コンクールはレベルが低くて、ショパンのピアノ・コンクールではだめだったと言っていた。
破天荒ながら完璧主義な優気子は、他人から見たら「手の付けようのない問題児」だろうけど、俺から見れば……恥ずかしいので言わない。
花火の火薬で点火薬を作る工程も終わって、準備は万端だと満足そうな顔でいる。
「巧、危ないから教室棟まで逃げて」
自殺でもするつもりか。まあ、優気子はそんなネガティブじゃないしな。ただ単に、俺を心配してくれているだけだろうな。
ん? 俺を心配? 優気子が? まさか。
「さっさと行ってって言ってるでしょ!」
ぴしゃん! 目の前でドアを閉められた。
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