俺と家族と鉄仮面

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子供の頃から、女性問題でいつもお袋を泣かせて来た親父。 何度お袋を泣かせても、同じことを繰り返す親父に俺は聞いてみた事がある。 「なぁ、親父。 何でお袋と結婚したの?」 「何だいきなり?」 池の鯉に餌を投げながら笑って答えた親父に質問した。 「だってさ、そんなに女が好きなんだったら結婚とかしない方が良かったんじゃねーの?」 真顔で言った俺をじっと見つめた親父がフフッと笑う。 「遊ぶ女と母さんは別。 本当に愛してるのは母さんだけだ。 だけど俺は女を口説いて落とすまでの駆け引きが好きなんだよ。 だから俺は母さん以外の女を抱いた事はない。 まぁキスくらいまでならするけどな。 翔人ならそれが解るだろう?」 「…まぁな…」 口説かれる女からしてみれば、なんて鬼畜な男たちの会話だろうと思われるかもしれない。 だけど親父の言う通りで、俺も口説き落とすまでの過程が楽しくてたまらない。 ただ親父と違うのは落とした後に、その女をいただくかどうかはその日気分。 俺は特定の女がいるワケじゃないから、抱こうが抱くまいが問題ないし。 だけど… いつか親父みたいに本当に愛せる女を探してるのも事実。 ただ今の俺は、親父の跡継ぎとしての使命を全うするために必死だった。 藤森家、3人兄弟の長男。 その肩書きだけで、親父の会社の社長なんて席に座らされた俺。 だけどそれは子供の頃から覚悟して来た事だったし、それを拒否するなんて選択肢は俺にはなかったから。 先月から胃癌で入院した親父。 その寿命はあと3ヶ月も残されてない。 せめて親父が生きてるうちに… 親父が俺たち3兄弟の親父であった事を誇りに思って旅立てるようにしてやりたい…。 それが今の俺に出来る、唯一の親父への親孝行だと思ってた。
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