小さな勇気

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隼人が勤務するこの支社は、美穂ちゃんの親父さんの会社の頃から守り続けて来た 縫製技術と我社オリジナルブランドの商品開発を中心にした技術系の支社。 隼人がこの支社に来てから、その技術を受け継ぐものの育成を重点にしながらも 新たに隼人の作ったネットショッピングサイトでの通販事業も開始した。 相変わらず、次から次へと新しい発想で利益を生み出してくれる隼人の存在は大きい。 「専務ー!これ新しいデザインなんすけど、どうっすかね?」 まるで友達との会話みたいに砕けて話しかける社員に 「おお、いい感じだな!サンプル作ってみよーぜ!」 と楽しそうに答えてる隼人の姿に俺はクスクスと笑いがこぼれる。 …本社じゃ絶対あり得ない光景。 数ある支社の中でもここの支社の売上がNo.1を誇るのは、やっぱり隼人のおかげだろう。 「お前にとっての会社って何だ?」 俺の質問に、あっけらかんと 「んー…サークルみてーなモンかな」 そう答える隼人に爆笑した。 俺はやっぱり、気張り過ぎなのかな? コイツみたいに気楽に考えられたら俺も変われるんだろうか? そんな事を考えながら隼人の背中を見つめてた。 支社の視察を終えて、いくつか取引先への挨拶回りを済ませたあと 俺は隼人と一緒に、美穂ちゃんの待つ家へと向かった。 「翔人さん、いらっしゃい!」 「美穂ちゃん久しぶり!」 まるで飼い主が帰って来たのを喜ぶ犬みたいに嬉しそうな顔をする美穂ちゃんが可愛くて 思わず、美穂ちゃんをギュッと抱きしめた俺を、慌てて引き剥がす隼人。 「兄貴!俺の美穂を勝手に抱きしめてんじゃねーよ!」 あ、久々に隼人の焦った顔。 ププッ! やっぱおもしれー…! やっぱり隼人は、一生俺の最高のおもちゃだ。 その夜は、美穂ちゃんの得意料理らしいモツ煮をつまみに隼人と酒を酌み交わした。
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