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程よく酔いが回って来た所で、いずれは子供部屋にするという2階の部屋で俺は眠りについた。
…が、
寝付いていくらもしないうちに、隼人が慌てて飛び込んで来た。
「兄貴っ!美穂が破水した!」
「はぁぁっ?!」
慌ててタクシーを呼んで美穂ちゃんを乗り込ませると
何を血迷ったのか、隼人が俺を助手席に押し込む。
「おい!俺も行くのか?!」
「当たり前だろ!兄貴が結婚しねーからこの子は藤森家の跡取りになるかもしれねーんだぞ!」
…おい…
どんだけ話が飛躍してんだよ…
「美穂!死ぬなっ!」
顔を青ざめながら取り乱す隼人に
「バカかお前!そこは頑張れって言ってやるトコだ!」
と突っ込みながら、産婦人科へと到着する。
苦しそうに顔を歪める美穂ちゃんがストレッチャーで分娩室へと運ばれると
「俺も立ち合いするって美穂と約束してるから」
と、少しだけ冷静を取り戻した隼人も分娩室へと入って行った。
深夜の待合室で、寝癖だらけの頭で一人取り残された俺。
…なんでこーなるかな?
そう思いつつも、甥っ子の誕生の無事をただ祈る。
時折聞こえて来る、美穂ちゃんの絶叫にビクビクしながらじっと分娩室の扉を見つめてたら
看護師に抱えられて真っ青な顔の隼人が出て来た。
「隼人…?」
俺の姿を見つけた隼人がガシっと俺の腕を掴んだと思ったら
「看護師さん!代わりに兄貴が立ち合いますから!」
「はぁぁぁっ?!」
「頼む!兄貴!俺と美穂の子がこの世に誕生する瞬間を見守ってやってくれ!」
必死の形相で俺にしがみつく隼人に唖然…。
「…あの…お兄様、どうなさいますか?」
困ったような表情で聞いて来た看護師に、俺は仕方なしに頷いた。
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