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グッタリとソファーに倒れ込んだ隼人に呆れながらも
看護師に連れられて行くと、なにやら消毒液みたいなのを吹きかけられて手術着を着せられる。
「ご主人は奥さんの苦しむ姿が耐えられなかったみたいですよ」
クスクス笑う看護師のおばさんに俺は苦笑い。
分娩台の上で、大汗をかいて苦しむ美穂ちゃんの隣に立たされ
「ご主人!奥さんの手をしっかり握ってあげて下さい!」
と先生に注意される…。
こんな所で、双子に間違われてる俺と隼人って…。
そう思いつつも、美穂ちゃんの手をギュッと握ってやると、
痛みに耐えながらも、美穂ちゃんがニコっと笑って
「翔人さん…すいません」
って謝ってる。
「大丈夫、美穂ちゃん頑張って」
微笑んで声をかけてやると、また美穂ちゃんの顔が苦痛に歪んで行った。
「はい、頑張って!頭出て来たよー」
先生の声に、ますます顔を真っ赤にして頑張る美穂ちゃんの手を俺も必死で握ってる。
やがて、ボコッ!って大きな音がしたと思ったら、先生の手には小さな赤ちゃんの姿。
足を掴んで逆さにすると、パチンと赤ちゃんのお尻を叩く。
と、同時に大きな声で泣き出したその声に俺の胸がジーンと熱くなった。
「元気な男の子ですよー」
先生の言った一言で、美穂ちゃんの顔が一気に笑顔に変わって行く。
「美穂ちゃん、おめでとう!」
体力を使い切った美穂ちゃんは、ニコリと笑ってから目を閉じた。
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