小さな勇気

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それから美穂ちゃんのご両親も駆けつけて、ガラス越しの新生児ルームでミルクを飲む赤ちゃんをしばらく眺めてたらすっかり朝になっていた。 「仕事行きたくない」 なんてダダをこねる隼人を美穂ちゃんが笑いながら 「行かないならもう赤ちゃん抱っこさせないよ」 と言い聞かせてるのを見て大爆笑した。 新幹線の駅へ向かう車の中で 「兄貴、立ち合いしてくれてありがとな」 照れ臭そうに言った隼人に俺はフフッと笑って 「いや、俺も貴重な体験させてもらったよ。 俺もいつか自分の子供が欲しいなーって思えた」 と答えてやると、隼人はクスっと笑ってから言った。 「結婚するまでには色々乗り越えなきゃならない壁があるだろうけど 本当に愛する女のためだったら全て乗り越えて行けるもんだぜ。 俺も美穂と結婚するまでには、嫌ってほど壁を乗り越えて来たし。 兄貴はいつも自分の頭の中で全て結論出そうとするけど、俺も鷹人も兄貴一人に全て背負わせるつもりなんかねーからな。 この会社は俺たち3人で守って行けばいいだけの事だから。 親父と兄貴は違うんだぞ。 一人じゃねーんだから、あんまり気張るなよ」 隼人の言葉の最後が親父の言葉と重なった。 「…そうだな…」 「早く兄貴って人間をちゃんと理解してくれる女が現れるといいな」 駐車場に車庫入れをしながら隼人がポツリと呟いた。 「じゃねーと、美穂にちょっかい出されて気が気じゃねーし」 俺はハハハと笑いながら車を降りた。
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