369人が本棚に入れています
本棚に追加
リョウと過ごした夜から1ヶ月。
あれ以来リョウとは会っていない…。
なんだか連絡しずらくて俺は戸惑っていた。
コートを羽織る事も減り始めたある日の朝…。
ついに親父はこの世を旅立った。
連絡を受けて、すぐに向かったのに…
最期まで俺にすら弱みを見せなかった親父は、俺が病院に着く5分前に息を引き取った。
親父に繋がれていた機材が次々と外されて行くのを、ただじっと見つめながら俺はその現実を受け止めた。
親父…
心配すんなよ…
俺も親父みたいにこれからも家族を守って行ってみせるから。
最後に一瞬だけでも俺を自由にしてくれてありがとう。
それだけで俺は十分だったよ。
そう思いながら立ち尽くしていると、ドアが開いて隼人と鷹人が飛び込んで来た。
「親父らしいよな…
俺でさえ、死にぎわに会わせてくれなかったよ…」
ポツリと言った俺の言葉で、鷹人が号泣する。
コイツも俺と同じなんだろう…
親父にただ褒められたくて頑張って来た鷹人。
だけど、感情を表に出せるだけ、俺よりずっと人間らしいヤツだと思う。
声をあげて泣き続ける鷹人の肩をそっと叩き、
黙って涙を零してる隼人を見つめながら俺は思った。
親父…
3人も自慢の息子がいたアンタは幸せな人生だっただろう?
今までお疲れ様…。
親父の人生は俺が繋いで行く。
だから…
もうゆっくり休んでくれよ…。
俺は大丈夫。
藤森家の長男だから。
病院の窓の外には誇らしげに花を咲かせる沈丁花。
…もう…春なんだなぁ…
そう思いながら俺は天を見上げた。
最初のコメントを投稿しよう!