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親父の葬儀は会社をあげて盛大に行ってやった。
この会社をたった一代で築き上げた親父の苦労は計り知れないものがあったから。
ヒクヒクと泣き続ける鷹人を隼人がポンポンと頭を撫でて慰めてる。
それを横目に見つめながら俺はただ冷静に親父の葬儀を見守った。
藤森家の長男が、世間の面前で涙なんて浮かべてちゃいけない。
この家族を…
この会社を…
俺はこれからも全て背負って生きてくんだから。
せめて…
隼人と鷹人には…
俺みたいな人生を歩ませたくない。
親父がいなくなった今、お前たちは自分の生きたいように進んで欲しい。
…これでいいんだよな?親父。
そう心で呟きながら、火葬炉の前で親父と最期のお別れをした。
親父の棺にしがみついて泣く鷹人の肩を、隼人がそっと支えてくれてる。
「こんだけ親父大好きな息子は、いねーだろな…」
軽く微笑みながら言った俺を隼人が苦しそうに見つめていた。
火葬炉の前でのお別れが終わり、職員が親父の棺に向かって手を合わせる。
ブルーのボタンをその職員が押して
ゆっくりと火葬炉の中に親父が吸い込まれて行った瞬間
「親父っ…」
自然に俺の口から出た言葉と共に、俺の足の力がガクっと抜けた。
咄嗟に両脇にいた、隼人と鷹人が俺を支えてくれる。
『お前は一人じゃない。
お前には二人も弟がいるだろう…』
親父と会話した最後の夜に、笑いながら親父が言った言葉が聞こえて
俺はようやく涙を流す事を許された気がした…。
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