剥がされた仮面

4/6
前へ
/29ページ
次へ
葬儀が終わった翌日から俺は会社に向かう。 家の方は、隼人と鷹人と美穂ちゃんの3人に守ってくれるよう頼んだ。 俺には親父を偲んで泣いてる時間なんかない。 あの会社も、藤森家の未来も全て俺にかかってる。 いつものようにエントランスで俺を迎える二人の秘書に、何事もなかったかのように微笑む。 社長室へ入った俺に続いて入って来た中山が、俺のデスクにスッとスケジュール表を置いた。 「本日のスケジュールです」 その紙を手に取って見た瞬間、俺の目は見開いた。 …なんだこれ… そのスケジュールには、全く予定が入っていなかったからだ。 「中山…これはどういう事だ?」 「ご覧の通りです。 本日は何もスケジュールは入っておりません」 「そんなはずはないだろう? まさかキャンセルしたのか?」 問い詰める俺をじっと見下ろした中山はゆっくりと口を開いた。 「社長… もう少しお休みになって下さい。 すぐに社長の採決が必要な案件はございません。 弔問されるお取引先の方々は、常務に全て対応して頂くよう手配してあります」 「…余計な事をするな…」 「今、社長が倒れてしまったらこの会社はどうなりますか? 会長が亡くなった今、私たち社員は社長を信じてついて行くしかないのですよ? 社長は… 一人で何もかも背負い過ぎです…」 背筋をピンと伸ばしたまま見下ろす鉄仮面に、俺の心を覗かれた気がして無性にイラっとした。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

369人が本棚に入れています
本棚に追加