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葬儀が終わった翌日から俺は会社に向かう。
家の方は、隼人と鷹人と美穂ちゃんの3人に守ってくれるよう頼んだ。
俺には親父を偲んで泣いてる時間なんかない。
あの会社も、藤森家の未来も全て俺にかかってる。
いつものようにエントランスで俺を迎える二人の秘書に、何事もなかったかのように微笑む。
社長室へ入った俺に続いて入って来た中山が、俺のデスクにスッとスケジュール表を置いた。
「本日のスケジュールです」
その紙を手に取って見た瞬間、俺の目は見開いた。
…なんだこれ…
そのスケジュールには、全く予定が入っていなかったからだ。
「中山…これはどういう事だ?」
「ご覧の通りです。
本日は何もスケジュールは入っておりません」
「そんなはずはないだろう?
まさかキャンセルしたのか?」
問い詰める俺をじっと見下ろした中山はゆっくりと口を開いた。
「社長…
もう少しお休みになって下さい。
すぐに社長の採決が必要な案件はございません。
弔問されるお取引先の方々は、常務に全て対応して頂くよう手配してあります」
「…余計な事をするな…」
「今、社長が倒れてしまったらこの会社はどうなりますか?
会長が亡くなった今、私たち社員は社長を信じてついて行くしかないのですよ?
社長は…
一人で何もかも背負い過ぎです…」
背筋をピンと伸ばしたまま見下ろす鉄仮面に、俺の心を覗かれた気がして無性にイラっとした。
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