剥がされた仮面

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スッと立ち上がった俺は、そのまま中山の両腕を掴んで壁に追い詰めた。 「余計な事をするなと言っただろう…。 …お前に俺の何が解る? 感情ひとつ表せないお前に… 俺の気持ちなんて解るはずない」 「…いいえ 私には社長のお考えになっている事が手に取るように解ります。 …何故そんなに自分を追い詰めるのですか? 見ているこちらが辛くなります」 やっぱり表情を変えないまま俺を見上げて言い放った中山に俺の怒りが爆発する。 「黙れ…」 お前に…俺の何が解る…? 勝手に俺の心に踏み込むな… 「いいえ黙りません。 私は社長の秘書ですから」 俺の中での我慢の限界を越えた中山の言葉で 壁に押し付けた中山の腕を片方の腕に持ち替えて締め直した。 冷酷な目で中山を見下ろしたあと もう片方の手で中山の頭を後ろから押さえつけて、そのまま乱暴に唇を塞いでやる。 顔を背けようと必死に抵抗する中山の頭をさらに力を入れ押さえつけ ビクンと揺れた中山の唇を強引に舌で割って侵入してやった。 自分のテリトリーにズカズカと侵入されるのがいかに不愉快か… お前の体で教えてやる… 「んんっ…」 苦しそうにもがく中山の腕をさらにきつく押さえつけてやると やがて抵抗していた中山の腕の力がガクンと緩んだ。 その瞬間、 俺は掴んでいた中山の腕に違和感を感じる。 …この腕… 慌てて唇を離して、じっと中山の瞳を見つめた。 ポロポロと涙を溢れさせた中山の表情から鉄仮面が剥がれ落ちて行く。 「…お前…」 「…お願いします社長… お体を…お休めになって下さい…」 その言葉に俺は中山の腕を解放する。 ようやく自由が利いた指で、溢れる涙をすくう中山の姿に俺の心が激しく締め付けられて行く。 デスクに置いてあるティッシュでクシャクシャっと涙を拭いた中山は 斜め45度のお辞儀をした後、踵を返して社長室から出て行った。 …俺… 何やってんだろ…。 どっちの俺も… 最低な人間じゃねーか…。
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