小さな勇気

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…あれからもうじき8か月。 季節はすっかり冬の気配。 俺は中山に何も言えないまま、ただ黙々と仕事をこなしてる。 中山も今まで通り、無表情の鉄仮面のまま何も変わらない。 ただ傷つける事しか出来なかった俺が、アイツにかけてやれる言葉なんてない。 それに… 俺が背負ってるものを、アイツにまで背負わせる訳にはいかないと思う気持ちが俺の心にブレーキをかけていた。 「社長、本日のスケジュールです」 「ああ、ありがとう。 それと明日、隼人のいる支社の視察が終わったらそのまま向こうで一泊する。 明後日の午後には戻る予定だけど、スケジュール調整しておいてくれ」 「はい、かしこまりました」 相変わらず斜め45度でおじぎして退室してく中山の姿にため息を吐き出した時、 俺の携帯にメールが届いた。 …美穂ちゃんからだ。 『翔人さん、こんにちわ! 今日は寒椿の花が咲きましたよ。 明日はウチにぜひ泊まっていって下さいね! 美味しい晩御飯用意して待ってます』 ご丁寧に自分のお腹越しに寒椿を撮影した写メが添付されてるし。 相変わらずこの子は、俺を和ませてくれる。 日に日に大きくなって行くお腹の写メをこうやって送って来ては俺の事も気にかけてくれてるみたいだ。 もうじき予定日の美穂ちゃんのお腹は妊婦だから大きいのか、 今まで通り太ってるから大きいのか俺には区別がつかないんだけど…。 隼人が言うには、相当大きく膨らんでるって話。 きっと美穂ちゃんにソックリなジャンボな赤ちゃんが出て来るんだろう。 ちなみに隼人には内緒らしいけど、生れて来るのは男の子なんだとコッソリ教えてくれた。 俺も初めての甥っ子の誕生が待ち遠しくてたまらない。 実家には産まれたらすぐに送れるように男の子用のベビー服が大量に積んである。 『晩御飯、大変だろうからデリバリーでいいよ』 そう返信して俺は口元を緩めながら携帯を閉じた。
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