マタドールの甘い誘惑

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仕事を終えて美穂を送り届けたあと、美穂の家の近所で藤森隼人と遭遇した。 まさかこの男までストーカーやってんの?! と疑った私は、藤森隼人の自宅まで確認しに行ってしまった。 だけどそこで衝撃的な事実を知る。 …まさか… あの女たらし藤森隼人が… 美穂に本気で惚れてたなんて、予想外な事実を知ってしまった私は明らかに動揺してる。 そのまま家に帰る気分になれず、私はまた電車であの店のある駅まで引き返した。 なんか… またあのマタドールと碧い瞳に癒されたい… 真っ黒な重いドアを開ければ、あの青く深い海の底。 「梓さん、いらっしゃい」 やんわりと微笑んで迎えてくれた智也さんの笑顔にホッとする。 「今日は一人なんだね?」 「うん…なんか飲みたい気分なんだよね。 またあのマタドールがいいな」 「かしこまりました」 ニコリと笑って、シェーカーを用意する智也さんを見つめながら私は大きくため息をついた。 「はぁぁぁーっ…最悪っ」 そう言いながらカウンターに突っ伏した私を見て、智也さんはクスクス笑いながらシェーカーを振る。 「どうしたの? 梓さんがそんな落ち込むなんて何かあったの?」 「…うん…予想外の事が起きた」 藤森隼人が本気で美穂を好き…? いや…やっぱ信じられない! あんな女癖悪そうなのに…。 フフッと笑いながら智也さんがスッとグラスを差し出してマタドールをついでくれる。 「予想外か… でも人生ってそーいう事の繰り返しじゃないの?」 微笑みながら言った智也さんに私は聞いてみる。 「ねぇ智也さん、藤森隼人ってどんな男?」 「えっ?」 いつも穏やかな智也さんの表情が一瞬曇った気がした。 だけど、すぐに智也さんはニコリと笑う。 「何で?梓さん…隼人に惚れちゃったとか?」 そう言いながら私の顔を覗き込む智也さんの笑顔がなんだ引きつってる? あっ! なんか勘違いされてるかも?! 私は慌てて否定した。 「あり得ない! 私があんな男に引っ掛かるようなタイプに見える?!」 なんか完全にムキになってるみたいで、これじゃ逆に怪しいし! あぁぁ…私ったら墓穴掘ってるみたいに思われてるよこれじゃ…
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