マタドールの甘い誘惑

13/13
504人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
私だってもう30歳。 これまでにだって人並みに恋もして来た。 結婚を意識した人だっている。 デザイン学校の頃の同級生。 創作するイメージがいつも被って、お互いが意識するようになって… 7年も彼だけを愛して来たのに… 結婚したら一緒にデザイン会社作ろうって約束までしてたのに… 『梓は強いから一人でも大丈夫だよね?』 そう言って彼は、同じ会社の女の子と突然結婚した。 そう…ちょうど椎名さんみたいな… ふわふわの綿菓子みたいな可愛らしい女の子だった。 捨てるんだったら殺してよ… そう思うくらい辛かった。 私は本当はそんな強い女じゃないのに… ちゃんと支えて欲しかったのに… だから私は彼と別れてから自分にずっと言い聞かせて来た。 『ひとりで生きて行ってみせる』 そうするしか彼を見返してやれる方法がなかったから。 そんな私の変化に気づいてくれたのが美穂だった。 「無理しなくていいんだよ? 梓が一人で泣けないんだったら、私が一緒に泣いてあげる」 そう言ってくれた美穂にすごく救われた。 だから…私は美穂には本当の幸せを掴んで欲しいって思う。 あの子だけは…私が守るんだから…。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!