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…が、それは突然訪れた。
倉庫に新商品のチェックに行った美穂を追いかけるようにして太田が席を外していた。
私もちょうど仕事に没頭してたから気づかなかったけど、それに気付いた藤森部長が慌てて倉庫に向かって行く。
「ちょっとトイレ行って来ます」
工藤君に言ったら、ほぇ?なんて間抜けな返事だったけど、私も急いで部長と共にエレベーターに乗り込んだ。
「私は自販機の所に行って来ます。
部長は倉庫お願いしますね」
「ああ、解ってる」
頷く部長の目は本気で焦ってるのが解る。
この人は…本当に美穂を思ってるんだ…
そう感じて、美穂の過呼吸の事を話そうかと一瞬思って口に出す。
「あの…もし太田が美穂に触れるような事してたら…たぶんあの子…」
「なんだ?」
そこまで言って、ハッと思った。
この事は…美穂本人から藤森部長に伝えるべきだと。
「…いえ、とにかく美穂の事、お願いします」
「…解った」
5Fの倉庫のあるフロアでエレベーターから走り出して行く藤森部長の背中を見送る。
…美穂を…
よろしくお願いします…
私は閉じて行く扉の向こうの必死の背中に頭を下げた。
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