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「はい、倉田さんはギムレット。
梓さんのカクテルは…
マタドールと言います。
由来は、闘牛士…です」
そう言ってクスクス笑う智也さんにまた私はカチンと来る。
「何で闘牛士なんですか?
意味解らない」
ブスっとふてくされながら言った私をじっと見つめたあと
再び笑った智也さんが言った。
「梓さんは…
闘牛士みたいな情熱的な方だから…ですよ。
それにホラ…
あそこの牛と華麗な戦いを見せてくれたから」
そう言いながら、ボックス席に座ってる槙田さんって女の子を、ちゃっかり泣かせてる藤森隼人を指差した。
はぁ?
…全くどーいう事よ、藤森隼人!
ほんっと最低ね!
そう思いながらも、カウンターの向こうで口元に手を当てて笑いを堪えてる智也さんに釣られて私も笑ってしまった。
「ぷっ…智也さんて面白い事言うのね」
「それは光栄です」
再びやんわりと微笑む智也さんを見つめながら思った。
…なんか…
この人の笑顔ってホッとする。
不思議な感覚を感じながら、私はマタドールを口に運んだ。
テキーラをベースにパイナップルとライムの程よい酸味がとてもフルーティーで口当たりがいい。
「美味しい…」
ポツリと漏らした私の言葉に、智也さんが満足そうに笑った。
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