Chapter.1 道中にて

6/6
前へ
/6ページ
次へ
「さて…」 女将さんとひとしきり世間話をした後、俺はこの村の地酒と牛肉のステーキを頼んだ。ここしばらくは携帯食料と干し肉しか食べてないので、こういう料理は久しぶりだ。 「はい、おまちどお!」 女将さんがステーキと酒の入ったジョッキを持ってきた。肉の焼ける香ばしい匂いに思わず涎が出そうになるが、なんとか堪える。 「んじゃ…いただきます。」 俺がしばらくいた東国の島国では、食べる前に『いただきます』という習慣があった。俺はその風習が気に入っている。 …っと…まずはステーキから…。肉を一口サイズに切り分けて…。付け合わせの野菜と一緒に食べる。 …うん、美味い。『肉』って味だ。一緒に食べた野菜が味を更に引き立てる。色々味付けしたヤツもいいが、やっぱこういうシンプルな料理が男の味だよな。 そして酒を一口。うん、美味い。すっきりしていて肉の味を邪魔しない。ささやかな贅沢って感じだ。 そして、付け合わせの芋が美味い。女将さんの味付けは、素材の味も活かしてる。素晴らしい。是非とも調理方法を知りたい。 そんな風に俺が飯を食っていると、宿屋の扉が乱暴に開かれた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加