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「何聴いてんだい兄ちゃん?」
そんな間延びした男の声に、思考の海に沈んだ俺の意識は覚醒した。
小さな馬車の荷台に寝っころがっていた俺は、ちょっとだけ伸びをして、声がした方向を向く。そこにはこの馬車の持ち主であるちょっと太り気味のおやじが馬の手綱を握っていた。
「こないだ遺跡で拾ったレコーダーの中身。」
「へえー、どんな内容だったんだ?」
「ちなみにさ、拾ったレコーダーの近くに人骨っぽいモンが」
「やっぱいいや、聞かないでおくぜ。」
顔を青くするおやじに苦笑しながら、俺はイヤホンを外し、そのままプレーヤーをコートの『中』にしまい、また荷台の上で横になった。
人間と、魔族との全面戦争『クロメリス戦争』が一人(いや一匹?違うか)の狼の活躍により集結してから早800年と30年ちょっとたった。空は当時のことを忘れたかのように青く透き通り、かつてはボロボロになった大地も、今では見違わんばかりに再生している。
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