第6話 剣道部

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「いや、朋美さんもどうかなと思ってるんだけど」 「わたしはあんな汗臭そうで重たそうな防具を着けてやるのは御免だわ」 「それじゃあ。マネージャーになればいいじゃない」 「ああ。そういう手もあったわね」 「でも、晶子さんはやっぱり剣士があってると思うよ。この前僕の部屋に入ったとき、君が見せたあの俊敏な動きは絶対に剣道向きだと思うんだ」  晶子は登校拒否していた一樹の部屋に無理やり入ったときのことを思い出して赤面した。  一樹の強引な誘いに負けて、晶子たちは放課後剣道部を見学することにした。剣道場は体育館とは別に校舎の裏手の新緑が鮮やかな林の中に泰然と建っていた。黒くくすんだ木造の建物はかなり古そうだったが、中は床がピカピカに磨かれて黒光りしていた。ちょうど部活の日で、大勢の剣道部員が気合いを発しながら激しく竹刀で打ち合っていた。 「ちょっと、なんかすごくない?」  朋美の剣道場での第一声はこれだった。 「でも、なんだか伝統がありそうな感じね」  晶子の言葉に一樹が応じた。 「そうなんだ。剣道部はこの学校では一番歴史が古くて、以前は都や全国大会で優勝したこともあるそうだよ」 「それで、床とかピカピカに磨かれてるのね」  晶子は屈んで、ツルツルの板張りの床を手で撫でてみた。 「ということは、部員がこの床を磨いているということよね。キツそうなクラブね」 「朋美はマネージャー志望なんだから床磨きは命令する方じゃないの」 「そうか。やっぱりわたしはマネージャー向きなのね」  そこへ、イケメンの剣道部の部長がやってきた。 「やあ。君たち入部希望者かい?あ、僕は三年A組所属でこの部の部長の瀬川総一郎です」 「わたしは二年B組の川木田朋美です。それでマネージャー志望なんですが空きありますか?」  イケメンに弱い朋美が即返した。
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