第6話 剣道部

4/22
前へ
/22ページ
次へ
「マネージャーか。いいよ、うちの部はちょっと問題があってマネージャーは置いてなかったんだけど。というよりも志願者がいなくて、ずっと空いていたからお願いできるならぜひ頼みます」 「志願者がいないって何か問題があったんですか?…あっ。わたしは朋美と同じクラスの朝倉晶子です」  朋美よりも先に、晶子が尋ねた。 「うん。二年前に当時二年生でマネージャーだった沢口真子さんが突然失踪した事件があってね。それで、剣道部に何か問題があるんじゃないかという噂が出て、それ以来、マネージャーの志願者がなかったんだ」 「失踪事件ですか。それで、その真子さんはどうなったんですか?」 「それがね、朝倉さん。親御さんが警察に捜索願いを出してはいるんだけど、いまだに見つかっていないと聞いてるよ。それでも、朋美さんはマネージャーをやってくれるの?」  失踪事件の話に朋美は少しひるんだが、マネージャーしかできそうもないので結局引き受けた。  剣道部の練習は週二回で女子部員は十人ほどいた。皆、今回の部活義務化で新規に応募してきた女子生徒ばかりだった。晶子を含めて剣道は初めてだったので、体育の授業を受けるように皆、基本練習中は緊張していた。それでも、晶子は超人的な敏捷性と動体視力の持ち主だったので、練習の回数を重ねるごとにその上達ぶりは目覚ましかった。  ある日、晶子の切れの良い動作が顧問の立花隼人先生の目にとまった。 「おい、君。名前はなんていうんだ?」 「えっ。わたしですか?朝倉晶子です」 「よし、朝倉、こっちにきてこれからは男子と一緒に練習をしなさい」 「ええっ。男子とですか?」 「そうだ、そこで素人の女子部員とちんたらやっていても強くはなれないぞ」 「でも、わたしは剣道を始めてまだ二週間くらいしかたっていませんが…」 「つべこべ言わずに、こっちにきて、この二年生の岡田正美君と立ち合ってみなさい」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加