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*****  放送部室の前に立ち、ドアを見上げる。  ――入りづらい。  この上なく入りづらい。  逃げ出したい気持ちを何とか奮い立たせ、大きく深呼吸をしてからコンコン、と扉をノックする。 「どうぞ」  春山先生の声だ。  わたしはそっと部室のドアを開けた。 「あれ……」  見回すと、テーブルに着いているのは春山先生だけだった。  わたしの方は見ずに、投稿用紙に目を落としている。 「引き継ぎは、終わったんですか」  春山先生は、ちら、と目線を上げた。 「また改めて、って事で、帰ってもらった。椎名が居ないんじゃ、話にならないだろ」 「…すみません…」  わたしは俯いたままぺこりと頭を下げた。 「もういいから。こっち、おいで。…これ、半分読んで」 「はい…」  しょんぼりしながらドアを閉め、先生の向かいに座る。 「違う。…こっちだって」  先生は、自分の隣の椅子を指差した。 「え…」  戸惑いながら先生の顔を見ると、…そこに浮かんでいるのは、ちょっとだけイジワルな表情。  …出た…。…久々の、いじめっ子…。  心臓のドキドキが、急速に速くなる。
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